南米留学放浪放言記

南米コロンビアのボゴタに留学する大学生が色々勝手にホザくブログ。

変則的深夜徘徊~視覚に頼らずキャンパス徘徊してみた~

 

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茨城県つくば市のとあるマンションの玄関から、一人の不審者が外に飛び出した。

 

それは、2015年12月、クリスマスの深夜のこと。

大学1年生だった私は、ファーのついた黒のゴツい服を身に纏い、使い道のなかった合金製の物干し竿を携えて、徒歩で数分の距離にある、筑波大学の構内に向かった。

 

ちなみに、当時の私は5mmくらいの坊主でパッと見た感じ厳つかった。

 

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ゴツいコートにサングラスに坊主、長い金属の棒......職質待ったなし (写真は成人式)

 

明らかに不審人物だ。

 

私を見るやいなや駆け足になった歩行者もいた。

 

まあ、クリスマスの夜にそんなことしてるってのは、いわゆるリア充でしかない。

  

 

大学構内に入ってから、ゴツいサングラスを着用し、さらに厳つくなった上で、目を瞑る。

目を瞑るだけなら多少の光は認識できるが、そのサングラスと併せると、視界はほぼ真っ暗だ。

 

そして、物干し竿を白杖代わりに使って、点字ブロックを頼りに進み始めた。

たまに不安になって目を開けながら。 

 

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大学の中心とも言える、円状に近い広場に差し掛かった。

 

そのまま北に直進、つまり円の直径を描くようにまっすぐ進んでいこうとしたのだが、気が付けばカーブを描いて西側の階段にぶつかっていた。

 

自分ではまっすぐ進んでいたつもりだったので驚いた。

 

 

そんな冬の夜の張り詰めた静けさの中、カツン、カツンと音がする。

 

振り返ると、ひんやりと冷たい石が敷き詰められたその広場を、高さ8cmほどの一本足の下駄を履いて歩く色白の女がいた。

 

アジア人なのにグレーの虹彩が特徴的なその女は、黒い傘を杖代わりにしていた。

 

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かくして、どうみても不審者である私と、それ以上に不審者なその生き物という奇妙なコンビによる深夜キャンパス徘徊がスタートした。

 

私は再び目を瞑り、その女の助言を受けながら、ゆっくりと近くの階段を降りた。

階段を降りてしばらく進むと、毎日のように目に触れる慣れ親しんだキャンパスなのに、自分がどこにいるのか、あまり分からなくなっていた。

不思議な心地にさせられた。

 

 

途中、自転車に乗った年配の男性が「案内しましょうか」と声を掛けてきた。

下駄女が「大丈夫です、ありがとうございます」と答えた。

 

 

物干し竿は、太い上に金属製。

地面に当たると音が鳴るし、点字ブロックの感触があまり伝わってこない。

歩きながら、何度も点字ブロックからずれてしまった。

 

足の感覚にもっと頼る必要を感じ、靴と靴下を脱いだ。

冬の夜の寒さですっかり冷えきった地面の上を直に歩くのは、拷問のようであった。

 

そして、キャンパス内をグルッと周り、別の階段を上って元の広場へ。

普段は何の迷いも苦労もなく淡々と歩いているその通路も、視覚情報を失ってしまえば、すっかり異空間になってしまうことを肌で実感した。

 


この謎の深夜徘徊をしたいと思ったのは、その日から約一週間前のこと。

授業を抜けて広場などを歩いていたとき、点字ブロックを眺めているうちに、例えば階段の手前では点のブロックが横に広がっていることなどを知り、興味を抱いたのがキッカケだった。


大学で感覚器障害に関する授業を受けたり、ダイアログインザーダークに行ったりしたことも大きいだろう。

  

 

我々人間は情報の80%を、視覚を通して得ているという。

 

その視覚情報がなくなれば、普段過ごしている世界はどう変わるのか、日常生活の中で確かめてみたかった。

 

深夜帯を選んだのは、日中だと人が多い上に自転車もあって危ないし、知り合いに声を掛けられる可能性が高く、うまく遂行しにくくなるから。

それに加え、何も知らずに気遣ってくれる人、視覚障害者を馬鹿にしていると受け取る人だっているかもしれないからでもあった。

 


一段落したのち、その下駄女と一緒に、北へと続く長く細い道を歩くことにした。

 

再び目を閉じた。

その道は、これまでも何度か通ったことがあったので、ある程度は頭に入っていたものの、ところどころで自分がどういうところを歩いているのか本当に分からなくなった。

 

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写真のように、点字ブロックが落ち葉に埋もれているところが何箇所もあった。

当事者からすればこれは結構な障害なのかもしれない。

まあ、落ち葉があろうがなかろうが、何度も点字ブロックから外れて、その度に指摘してもらいながら北へと進んだ。

 

 

言うまでもなく、ソイツが一緒にいなければ、どこにも行けなかっただろう。

白杖を持った視覚障害者の中には、スピーディに歩く人もいるが、視力の程度にも依存するであろうとはいえ、やはり慣れというものが重要だ。

 

 

しばらく歩いたのち、

 

「池がある。(私を)落としたい」

 

などとその女が言い始めた辺りで、

 

「変な行動に出られないように話を振ろう」

 

 と思って色々話かけることに努めた。

 

そのお陰か、結局何事もなく、サヨナラして帰路に就くことができた。